虚飾に満ちたハリウッド。作り物の舞台、着飾った役者、煌びやかな装飾品、それらをフィルムに焼き付けて夢を作る工場。作り手は、必ずしも品行方正ではない。傲慢な権力者、そして見苦しいほどに媚びる者達。自身も道化師として権力者の取り巻きだったマンク。しかし、フェイクニュースの片棒を担ぎ死んでいった同僚を思い、最後に真実を描きたいと渇望する。
ハリウッドの権力者の本当の姿を描く行為、それがどれほどの自殺行為かは周囲の反応からもわかる。誰もが彼を止める。怒り、脅し、懇願、しかし、腹を決めた彼は信念を貫く。もっとも、ジャーナリズムでも、崇高な思いでもないだろう。彼は自分のこれまでを反省し、それらを清算したいがために反抗するのだ。
『市民ケーン』は、臨終の際に呟いた「バラの蕾」を探すお話。観客は、真実はそこにあるのにたどり着けないもどかしさを感じるはずだ。ラストシーンには真実とは何かと考えさせられる。